Ⅱ章 治療法


補助化学療法(CQ23~CQ26)

術後補助化学療法の意義

 術後補助化学療法(adjuvant chemotherapy)は,治癒切除後の微小遺残腫瘍による再発予防を目的として行われる化学療法である。本邦では古くから多くの臨床試験が行われながら確実な延命効果は示されなかったが,2006年,ACTS-GC試験によりS-1の有効性が示され,本邦における標準治療となった(エビデンスレベルA)59,60)。その後,S-1と他剤の併用療法を検討した複数の探索的試験(術後投与の安全性確認試験)が実施され61),現在国内外でそれらの臨床的有用性が第Ⅲ相試験で検討されている。
 一方,2012年には韓国で実施されたCLASSIC試験においてカペシタビン+オキサリプラチン併用療法の有効性(無再発生存期間の延長)が示され62)2015年11月に日本でもオキサリプラチンの胃癌適応(術後補助療法)が承認された(エビデンスレベルA)。適切な術後補助化学療法により治癒切除後の治癒率が向上することから,治療においては全身状態や有害事象の発現状況を勘案した上で,予定通りの投与量・スケジュールの維持に努めることが重要である。

術後補助化学療法の適応

 ACTS-GC試験での対象症例は,『胃癌取扱い規約第13版』による根治A,B手術(D2以上のリンパ節郭清)を受けたpStage Ⅱ,ⅢA,ⅢB症例(ただしT1症例を除く)であり,本ガイドラインでもこの対象に対するS-1補助化学療法を推奨する(CQ23)。
 ただし,治療方針の決定の際には,現行の『胃癌取扱い規約第15版』では,TおよびNの分類法とStageが大幅に変更になっており,第13版からの単純な読み換えはできないことに注意を要する。