学会概要
ご挨拶
この度、日本胃癌学会理事長を拝命いたしました市川大輔と申します。日本胃癌学会は、1962年に発足した胃癌研究会を前身として、胃癌に関する基礎研究および臨床研究を推進してまいりました。胃癌取扱い規約や治療ガイドラインの策定、全国胃癌登録事業などを通じて、我が国の胃癌診療の発展に大きく貢献するとともに、世界の胃癌診療にも大きな影響を与えてきました。近年では、笹子三津留先生、今野弘之先生、小寺泰弘先生、掛地吉弘先生といった歴代理事長の先生方の力強い牽引により、さらに大きく発展してきました。このように長い歴史と伝統を有する本学会の理事長という大役を仰せつかり、身の引き締まる思いでございます。
近年、我が国の胃癌を取り巻く状況は大きく変化しています。生活様式の変化や Helicobacter pylori感染率の低下などを背景として胃癌罹患数は減少傾向にありますが、検診によって早期胃癌として発見される症例は多く、内視鏡治療は重要な治療選択肢として確立しています。また、手術リスクの高い患者などでは、その適応がさらに拡大しつつあります。一方で、外科手術症例数は減少しているものの、高齢患者や上部胃癌など難度の高い症例は増加しており、腹腔鏡手術やロボット支援手術など高い技術を要する低侵襲手術も広く普及しています。また、薬物療法の分野では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の導入により治療成績は着実に向上しています。さらに、バイオマーカーに基づく個別化医療の重要性も高まり、治療成績のさらなる改善を目指した集学的治療戦略への期待も広がっています。その一方で依然として多くの課題も残されており、特に腹膜播種は胃癌における代表的なアンメットメディカルニーズの一つであり、新たな治療戦略の開発が強く求められています。
限られた症例数の中での若手医師の教育や技術継承、また多様化する治療法に対応できる人材の育成も重要な課題となっています。こうした状況の下、本学会では、胃癌診療の質の担保を目的として施設認定制度を整備してきました。現在では全国で400施設を超える認定施設が登録され、その良好な治療成績も報告されています。今後は、この施設認定制度の充実とともに、胃癌診療に精通した医師を育成する専門医制度の在り方についても議論を深めていく必要があります。また、患者さんやご家族、一般市民への情報発信の充実、国内他学会との連携、国際学会との協力など、日本胃癌学会が担う役割はますます多様化しています。
胃癌診療を取り巻く環境は今後も変化していくものと思われますが、本学会がこれまで築いてきた伝統と知見を大切にしながら、これからの胃癌診療を担う若手医師にとって魅力ある学びと交流の場となる学会を築き、胃癌診療のさらなる発展と患者さんの予後改善に貢献していくことが私たちの使命であると考えております。
会員の皆様のご指導、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年3月
